伝え方のイノベーション

巻頭言

 SNSの影響で売上が倍増することもあれば、炎上し謝罪する例も珍しくない。炎上することによる売上減などのリスクも大きいが、効果的にアピールすることは売上だけでなく企業の人材確保など、様々な課題の解決にも実は繋がる時代である。
 今回は、ブランディングや発信とはこれまで無縁だった製造業や盆栽業界、漫画家など様々な業界の方々の前例に捉われない発信方法に注目した。精密機器メーカーである株式会社Orbray並木里也子氏による地域や社内外とのコミュニケーション手法、盆栽の格好良さを表現することで、世界的なセレブリティやラグジュアリーブランドからのオファーや、若い世代の就職希望者が殺到する小島鉄平氏、2007年の流行語大賞にもノミネートされた「干物女」というパワーワードの生みの親で、前クールで話題を呼んだテレビドラマ『西園寺さんは家事をしない』の原作漫画家ひうらさとる氏のインタビューや、ジャーナリスト林信行氏によるメッセージ発信のポイントの分析、YON-KA武藤興子氏の熱意から始まった20年の軌跡から、伝える秘訣を探った。
 彼らに共通する、ノイズにならず、シグナルとして目や心に留まる「伝える力」の源を探ると、根底の熱い思いはもちろん、人の心の機微を丁寧に観察する力、継続する力が印象的だ。AIが注目されているが、まだ人の感情の変化を読み解く力はない。人間だからこそ感じられる空気感をベースに、諦めない心を持ち続け、伝えることで、望む未来を切り開くための一助としてほしい。

本誌編集委員 吉田 けえな

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