寄稿


エフェクチュエーションによる市場創造

Text 吉田 満梨
神戸大学大学院 経営学研究科 准教授

市場創造の現実と理論の解離

 「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させること」 を担うマーケティングは、きわめて創造的な活動である。新たなヒット製品が開発されたり、既存ブランドが新しい顧客との関係構築に成功したりする結果、新たな市場が創造されるという事象は、とりわけそうしたマーケターの創造力に依拠するところが大きい。
 一方で、伝統的なマーケティング研究では、市場創造の成功は、様々な調査によって消費者ニーズとその重要な次元が理解され、それに対応する製品コンセプトが開発され、対応する技術代案によって実現された製品が、テストを経て市場導入に至る、という合理的で整然としたプロセスとして説明されがちであった。石井淳蔵による『マーケティングの神話』(1993/2004)では、こうした説明が創られた神話に過ぎないことを30年以上前に看破している。現実には、消費者の欲望は交換の前提というよりも、交換を通じて構成される存在であり、企業が開発する製品の能力もまた、製品コンセプトやターゲットが定まらなければ(あるいは市場に出した後も)確定できない困難の中で、企業は新たな市場創造のためのマーケティングを実践しなければならない。もし意思決定者としての企業(マーケター)が顧客を含む外部環境に対して最善の適応を図る、という因果関係に基づく適応の論理だけで現実を捉えようとすれば、「偶然とか恣意性とか、あるいは具体的に言えば現場での人間の知恵とか思わぬ発想とかが入ってくる余地は、まったくと言っていいほどない」 ため、マーケティングの創造的な側面は過小評価される恐れがある。

不確実性を伴う創造プロセスの論理:エフェクチュエーション

 それでは、技術と製品コンセプトの結びつきが必然ではなく、ある製品の消費者にとっての意味も自明でない不確定性の中で、マーケターはいかに新規性の高い製品コンセプトの開発を行い、市場創造を実現するのか。2001年に学術雑誌Academy of Management Reviewで初めて提唱され、2009年にはJournal of Marketingにも論文が掲載された、サラス・サラスバシー(Saras Sarasvathy)(2001, 2008)によるエフェクチュエーションの研究は、こうした問いに明確な指針を与えるものであった。
 サラスバシーは、全米の熟達した起業家 に協力を得て意思決定実験を行い、そこから、新たな市場創造や事業創造を繰り返し経験してきた彼らが活用する思考様式を抽出した。その思考様式は、因果関係に基づいた予測合理性を重視する論理(コーゼーション:causation)とは対照的に、予測ではなくコントロールに集中することで不確実性に対処することに大きな特徴を持っており、「エフェクチュエーション(effectuation)」と名付けられた。エフェクチュエーションは、次節で述べる5つの思考様式(原則)から構成され、起業家はそれらを適切に組み合わせ、不確実性の中でも図1のようなサイクルを拡大しながら進めることができると考えられている。

図1 エフェクチュエーションの全体プロセス

出所:Sarasvathy 2008, Read et al. 2009をもとに作成

 こうしたエフェクチュエーションの論理は、「不確定な状況における意思決定の一般理論」(Sarasvathy 2008, 訳書p.340)と位置付けられ、起業家から発見されたものの、当初からスタートアップ以外の不確実性に対処する上でも有効な論理であることが示唆されていた。その後に発表された多くの経験的研究の成果からも、既存の組織におけるビジネスモデル改革や、新製品開発、研究開発(R&D)、サービスイノベーション、マーケティング、国際化を含む、幅広い領域への適応可能性が示されることとなった。

エフェクチュエーションの5つの原則

 エフェクチュエーションは、5つの思考様式(原則)から構成され、その全体が予測に基づかないコントロール(非予測的コントロール)の論理を形作っている。
 第一に、当初から市場機会や対応すべき顧客ニーズのような目的が明確に見えなくとも、自らが既に持っている手持ちの手段(資源)、その中でもとりわけ「私は誰か(Who I am)・何を知っているか(What I know)・誰を知っているか(Whom I know)」を活用することで、「何ができるか」のアイデアを生み出すパターンが見られた。このように目的主導(goal-driven)ではなく手段主導(means-driven)で何ができるかを発想し着手する思考様式は、「手中の鳥(bird-in-hand)の原則」と呼ばれる。
 第二に、アイデアを実行する段階では、コーゼーションでは一般に期待利益に基づいて最適な選択が志向されるが、不確実性が高ければそれは困難となる。そこで、逆にダウンサイドのリスクを考慮して、うまく行かなかった際に起きうる損失が許容できるか、という基準でコミットメントを行うべきかが判断される(「許容可能な損失(affordable loss)の原則」)。これらのヒューリスティクスを用いることで、環境や行動の結果が不確実な状況でも、具体的なアイデアを発想し、それを行動に移すことが可能になる。
 第三に、他者との相互作用においては、コーゼーションに基づくならば顧客や競合をあらかじめ定義し、市場調査や競合分析によって市場環境における機会や脅威を予測して対処することが重視される。一方、エフェクチュエーションでは、誰が顧客となり競合となるのかは、事業や市場が形成された後に初めて決まる問題であると考え、コミットメントを提供する可能性のある、あらゆるステークホルダーとパートナーシップの構築を模索しようとする。これは、「クレイジーキルト(crazy-quilt)の原則」と呼ばれる思考様式である。
 相互作用の結果として、パートナーのコミットメントが獲得されれば、参画したパートナーの「手持ちの手段」が起業家の活動に新たに加わるため、活用できる「手持ちの手段(資源)」は拡張され、それらによってパートナーと共に「何ができるか」を再度問うことになる。さらに、パートナーの参画は「手段」だけではなく、新たな「目的」ももたらしうるため、エフェクチュエーションのプロセスでは、構築されるパートナーシップを組み込みながら、「何ができるか」が拡張しながら繰り返し再定義されることになる。
 このように予期せずパートナーからもたらされた手段や目的を受け入れ、それを積極的に活用しようとする姿勢は、偶然を梃子として活用する第四の思考様式である、「レモネード(lemonade)の原則」に関係している。エフェクチュエーションを活用する起業家は、偶然手にしたものや想定外の事態を受け入れた上で、それらをポジティブにリフレーミングする傾向がある。そのため失敗や思うようにならない現実も、「何を知っているか」という手持ちの手段を拡張する学習機会と捉え、新たな行動のための資源として活用しようとするのである。
 以上のエフェクチュエーションのプロセスでは、まずは企業家自身がコントロール可能な手持ちの手段と許容可能な損失の範囲に基づいて新たな行動が生み出されるが、その結果として生み出される新たなパートナー関係や偶発性を取り込み、それらを次の新たな行動の源泉とすることで、漸進的にコントロール可能性(実効性)を高めていくことになる。特徴的なのは、その過程で予測をまったく必要としないことであり、起業家自身も想像しなかった新しい事業や市場の創造に帰結することも起こりうる。このように高い不確実性下で何とか予測しようと努力する代わりに、自らのコントロール可能性に集中することで、望ましい結果を生み出そうとする思考様式が、エフェクチュエーション全体を支えており、「飛行機の中のパイロット(pilot-in-the-plane)の原則」と呼ばれている。

市場創造とはどのような事象なのか

 従来、目的に対する最適な手段の選択を前提とするコーゼーションの論理だけが合理的だと考えられてきたマーケティングの実務ならびに研究において、コーゼーションとは異なるタイプの合理性として、エフェクチュエーションの論理が発見された。そのことは、マーケティングの創造的な側面と、その結果として実現される市場創造という現象を理解する上で、重要な意義を持つと考えている。
 まず、そもそも市場創造とは、どのようなプロセスによって起こりうるのかを整理しておきたい。マーケティングの教科書において市場とは、「企業に提供物に対して十分なレベルの関心と、十分な所得、製品へのアクセスを持つ消費者の集合」 (Kotler & Keller 2016: pp.108-109)と説明される。すなわち、市場とは、購買力を持った潜在的な顧客の集合であり、より具体的には、何らかの類似性を持つ製品・サービスの集合と、それに対応する特定の需要との組み合わせによって成立している。石井他(1985)では、これを同種の技術の集積すなわち「産業(業界)」と、顧客という購買力を持った欲望の集積すなわち「顧客需要」という2つが交差するところに成立する場として、図2のように説明している。例えば、早く移動したいという消費者の欲望(欲望a)に、自動車(製品1)が対応する、という具合に、ある技術の集積と欲望の集積が交差する部分に自動車市場(市場1a)は成立するのである。

図2. 技術と需要が交差する場としての市場

出所:石井他(1985)、20ページ

 ただし図2では、早く移動したいという欲望(欲望a)は、鉄道(製品2)や自転車(製品3)といった別の製品によっても充足される可能性があり、自動車(製品1)は、社会的地位の高さを表明したいという欲望(欲望b)にも対応することがわかる。こうした消費者の欲望と製品との間に、既に安定的な対応関係が存在する場合には、市場が成立している。したがって、新たな市場が創造されるというのは、従来存在しなかったような製品(技術)と、欲望(ニーズ)との組み合わせが、新たに作りだされる状況であるといえる。例えば、トヨタが「プリウス」というブランドをリリースしたことによって、自動車に対する「低燃費」や「環境性能」を求める新たな消費者欲望(欲望cや欲望d)との関係が創り出された結果、自動車市場に「ハイブリッドカー」の新市場が創造されたのである。
 仮に自動車メーカーにとっての市場創造が、消費者が抱く未充足のニーズ(欲望x)を特定し、それに適応するための新たな自動車(製品1´)や自動車以外のソリューション(製品n)を開発する、というコーゼーションの問題に過ぎないのであれば、市場創造の難しさは、求められる新たな製品・サービスを開発できるか否かの技術的な問題にすぎなくなる。こうした前提で理解される市場創造とは、すなわち新製品開発とほぼ同義であるといえる。
 しかし実際には、たとえ綿密な市場調査を行ったとしても、適応すべき消費者ニーズが明確に見えない場合や、消費者の欲望と自社の技術代案との対応関係を見出すことが困難な場合も多いと考えらえる。
 逆に、技術的には何ら新しい要素を付加していない企業の既存製品に対して、思ってもみなかった使い方や価値を消費者が発見し、新たな需要との対応関係が形成されることで、新たな市場が創造される場合もあるだろう。さらには、消費者側では事前に需要が存在しておらず、当初は「そんなものが売れるわけがない」と言われていた新製品が、実際に人々の認識や生活様式の変化を生み出した結果、新市場が創造されたというパターンもあるだろう。
 コーゼーションの論理のみに基づいて現象を理解しようとすれば、上述のような市場創造の過程でマーケターがしばしば直面しうる不確実性を過小評価し、また市場環境への適応に還元されえない重要な実践や、そこで発揮されるマーケターの創造性を取りこぼしてしまう恐れがある。

市場創造の実効理論としてのエフェクチュエーション

 エフェクチュエーションの論理は、従来のコーゼーションでは十分な説明が困難であった市場創造の現実を捉える上で、重要な枠組みを提供してくれる。具体的には、市場創造に関わる3つの事象について、さらなる理解や研究の可能性を探求できると考えている。
 第一に、製品コンセプトが確立されるミクロなプロセスの解明である。企業の製品開発やマーケティング活動全体に指針を与える製品コンセプトは、企業の提供物が誰に対してどんなベネフィットを実現するか、を表現したものであり、その決定には、企業が提供しうる技術シーズと消費者の具体的なニーズとの統合が含まれる。ただし、これまでにも指摘されてきたように、とりわけ新しい製品・サービスの場合、それに対応する消費者のニーズは、むしろ実際の消費経験を通じて構築される側面があるため、市場導入以前のマーケティングリサーチ等によって明らかにできない場合も多い。こうした不確実性を伴う意思決定において、製品・サービス(製品n)と消費者のニーズ(欲望x)との対応関係をマーケターがいかに見出し、新たな製品コンセプトの開発に至るかは、これまでの研究蓄積で十分明らかにされてきたとは言い難い。こうした高い不確実性と、それゆえに創造性を伴うマーケターの実践は、文脈性や個別性が高いこともあり、一般化した説明が困難であると考えられてきた。ただし、こうしたマーケターエフェクチュエーションの論理によってそのプロセス記述が可能になれば、ブラックボックスであったマーケターの実践に光を当てることができると期待される。
 第二に、マーケティング活動における偶発性の活用に対する理解である。新たな市場が創造される不確実性を伴うプロセスでは、新たな製品・サービスの開発段階でも上市後にも、期待した成果が得られなかったり、予期せぬ新しいインプットがもたらされたり、といった経験は多く観察される。企業の外部に存在する市場環境に対して、十分に高い認知能力を持った企業が最適な適応を行うことを前提とするコーゼーションの発想では、企業による期待や予測から逸脱した消費者の反応を含む様々な偶発的な事象は、ノイズとして無視すべき、また阻害要因として回避すべきものとして、しばしば扱われてきた。しかし、現実の市場創造のパターンでは、例えば、自社が以前から発売している既存製品に対して、実は当初のターゲット以外の顧客や想定外の価値が存在することにマーケターが気づき、そうした偶発性を活用することによって新たな消費者の欲望との対応関係が生まれることも起こっている。こうした当初は見えなかった市場の反応や変化を取り込み、マーケティングの意思決定に反映させることの重要性は、近年のマーケティング研究でも「適応的マーケティングケイパビリティ」(Day 2011)や「マーケティング・アジリティ」(Kalaignanam et al. 2021、Kotler et al.2021)といった概念とのかかわりで議論されるようになっている。エフェクチュエーションの論理によって、従来のコーゼーションによる説明では見落とされがちであった、こうした市場創造の事象に対して、さらなる理解を促すことができると考えている。
 第三に、多様なコミットメントを提供しうる顧客や他のパートナーとの共創的関係の重要性である。当初は多くの人々が「売れない」「ニーズがない」と考えていた新製品・サービスが、実際に市場導入された結果、新規の需要を創造して新市場の創造に至る事例は、しばしば観察されている。こうした製品・サービスの場合、様々な調査・分析を通じて消費者ニーズとの対応関係を予測しようとするコーゼーションの発想では、「ニーズが存在しないのだから止めるべきだ」という結論にしか至らない恐れがある。従来存在しなかった新規性の高い製品であれば、既存のニーズの存在を前提にできないためである。これに対して、エフェクチュエーションを活用する熟達した起業家には、精緻なマーケティングリサーチや競合分析を行わずに、あらゆるステークホルダーと交渉してコミットメントの提供を模索する傾向が見られた(クレイジーキルトの原則)。ここでのコミットメントには、顧客として製品・サービスを「購入すること」も含まれるが、自らが直接製品・サービスを購入する以外にも、他者への推奨や、重要な見込み顧客の紹介、フィードバックやアイデアの提供など、市場創造に貢献しうる様々な参画が含まれる。どれほど優れた製品でも、それを開発しさえすれば、価値を見出す人々が自然と生み出されるわけではないが、こうした多様なリソースを提供するパートナーと共に、新規性の高い製品・サービスが受容されるような、新たなコンテクトや生活様式を共創することは可能である。企業の提供物の価値が、顧客や様々なステークホルダーとの間で共創される現実は、サービス・マーケティング(e.g. Grönroos 2008)やユーザーイノベーションの研究(e.g. 小川 2013)、サービス・ドミナントロジック(SD-logic)の議論(e.g. Vargo & Lusch 2004, 2008)においても重視されてきた。エフェクチュエーションの議論は、とりわけ新たな市場環境を構成する局面において、こうした共創的関係がいかに機能するかについて、より具体的な検討を可能にすると考えている。

おわりに

 今日、エフェクチュエーションに関する世界的な研究数は急激に増加している現状があるが、その多くはスタートアップ企業を対象としたものである。一方、国内では、大企業を含む既存組織のマーケティング行動に対してエフェクチュエーションの視角を適用する議論が先行して展開されており(e.g. 吉田 2010; 2018、栗木 2024)、本稿で述べてきたように従来のコーゼーションでは十分な説明が困難であった市場創造という現象については、とりわけ新たな分析視角を提供しうると考えている。現実の理論とギャップを埋めることに貢献する、経験的妥当性の高いマーケティング研究が、さらに蓄積されていくことが期待される。

参考文献
Day, G. S. (2011). “Closing the marketing capabilities gap.” Journal of Marketing, 75(4):183-195.
Grönroos, C. (2008). “Service logic revisited: who creates value? And who co-creates?.” European Business Review, 20(4): 298-314.
石井淳蔵・奥村昭博・加護野忠男・野中郁次郎 (1996) 『経営戦略論(新版)』有斐閣.
石井淳蔵(1993/2004)『マーケティングの神話』日本経済新聞出版/岩波書店.
Kalaignanam, K., Tuli, K. R., Kushwaha, T., Lee, L., & Gal, D. (2021). “Marketing agility: The concept, antecedents, and a research agenda.” Journal of Marketing, 85(1):35-58.
Kotler, P. & Keller, K. L.(2016)Marketing Management, Global Edition. Pearson Education Limited.
Kotler, P., Kartajaya, H., & Setiawan, I. (2021). Marketing 5.0: Technology for humanity. John Wiley & Sons.(恩藏直人監訳『コトラーのマーケティング5.0:デジタル・テクノロジー時代の革新戦略』朝日新聞出版, 2022)
栗木契(2024)『エフェクチュアル・シフト』千倉書房.
小川進(2013)『ユーザーイノベーション: 消費者から始まるものづくりの未来』東洋経済新報社.
Read, S., Dew, N., Sarasvathy, S. D., Song, M., and Wiltbank, R. (2009). “Marketing under uncertainty: The logic of an effectual approach.” Journal of Marketing, 73(3):1-18.
Sarasvathy, S. D. (2001). “Causation and effectuation: Toward a theoretical shift from economic inevitability to entrepreneurial contingency.” Academy of Management Review, 26(2):243-263.
Sarasvathy, S. D. (2008). Effectuation: elements of entrepreneurial expertise. Northampton: Edward Elgar Publishing. (加護野忠男監訳、高瀬進・吉田満梨訳『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』碩学舎, 2015)
Vargo, S. L., & Lusch, R. F. (2004). “Evolving to a new dominant logic for marketing.” Journal of Marketing, 68(1): 1-17.
Vargo, S. L., & Lusch, R. F. (2008). “Service-dominant logic: continuing the evolution.” Journal of the Academy of marketing Science, 36: 1-10.
吉田満梨 (2010). 「不確定な環境における市場予測と遂行的実践:株式会社伊藤園飲料化比率を参照点とした市場創造の事例」『マーケティングジャーナル』 29(3): 59-73.
吉田満梨. (2018). 「新市場創造プロセスにおける不確実性と意思決定」『マーケティングジャーナル』37(4): 16-32.

注釈
ⅰ:2024年に改定された、日本マーケティング協会によるマーケティングの定義より。
ⅱ:石井淳蔵(1993/2004)『マーケティングの神話』日本経済新聞出版/岩波書店。
ⅲ:調査対象者は、成功した起業家リストの掲載者で、「個人・チームを問わず、1社以上を起業し、創業者としてフルタイムで10年以上働き、最低でも1社以上を株式公開した人物」であり、該当者245名全員に調査協力を依頼し、最終的に45名が同意した。彼らの発話プロトコルデータをコーディングした結果、27名分のデータで理論的飽和に達し、明確なパターン(=非予測的コントロールの論理)が抽出された。

吉田 満梨(よしだ まり)氏
神戸大学大学院 経営学研究科 准教授

神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了(博士・商学)、首都大学東京(現・東京都立大学)都市教養学部助教、立命館大学経営学部准教授を経て、2021年より現職。
専門は、マーケティング論で、特に新しい製品市場の形成プロセスに関心を持つ。主要著書に、『エフェクチュエーション:優れた起業家が実践する「5つの原則」』(共著、ダイヤモンド社)、『デジタル・ワークシフト』(共著、産学社)、『マーケティング・リフレーミング』(共著、有斐閣)、『ビジネス三國志』(共著、プレジデント社)など。主要訳書に、『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』(サラス・サラスバシー著、共訳、碩学舎)など。