「新しいしごと」を再考する。


社会問題解決型ビジネスという “怪しい” チャレンジ

社会問題解決型ビジネス
(アイデア発想)
を生み出す
4つのステップ

 前編では、新規事業を構想していくにあたっての視点として、「新しいとは何か」「正しさとは何か」、そして、事業企画を考えていくにあたっての「社会問題起点での事業構想」の可能性と企業の課題認識について書かせていただきました。
 そこで、後編となる本稿では、その「社会問題解決型ビジネス」を構想するにあたっての私が重要と考えている4つのステップをご紹介させていただき、みなさんと考えていきたいと思います。

Step1:「熱量探索」
〜課題解決に熱量を捧げられる社会問題を選ぼう!

 社会問題解決型ビジネスの企画は、まずはいろいろな社会問題を知ることから始めます。まるでシャワーを浴びるように触れてみる。その営みの中で、自分が「怒り・熱量」を感じる問題を選ぶ。会社から与えられた社会問題を起点とすることも重要なのですが、ここでは、「私」という主語で、自分自身が強い課題認識を持ち、「会社を使ってビジネス化をすることを通じて解決したい」と強い熱量を持てる社会問題を選ぶことが重要。自分で選んだ社会問題を解決するためのビジネスづくりは、実装を実現するための強い原動力になります。

Step2:「未来夢想」 
〜問題解決の先にある独自の理想な未来を描こう!

 社会問題を選んだら、その問題を選んだ「わたし」が創りたい未来像を描き出します。
 「その社会問題が解決された先には、どんな素敵な未来が待っているのか?」。この問いへの「こたえ」は、個々人によって異なるものであり、会社によって独自の色が出るものです。
 なぜこんなことをするのかというと、社会問題を選んですぐに企画を考え始めてしまうと往々にして、同僚やはたまた同業競合他社とあまり違いが見られないアイデアになってしまいがち。
 この理想的な未来像を独自性のあるカタチで定義することができれば、それこそが事業アイデアを構想する際の「オリジナリティの基軸」になります。

Step3:「社会問題の課題化」
〜”収益性”のあるボトルネックを探そう!

 ここでは大きく3つのプロセスで社会問題の分析を行います。①社会問題の実態整理:誰が・何がどのような状態にあるのか、②社会問題の市場規模:どの程度の人・組織がその困難に直面しているか、③社会問題の原因/課題分析:問題の発生原因となっているボトルネックは何か。
 このプロセスの中でとにかく重要なことは「当事者の話を聞くこと」。困難の渦中にある方々、支援団体、行政などなど、社会問題には多くのステークホルダーが存在します。その方々との対話を通じて、社会問題の解像度を上げ、ニーズの大きさを肌で感じることが重要なわけです。
 このプロセスを通じて「最大のボトルネックになっている課題」を見極めていくのですが、そこで重要なのが、「その課題を保有する人・組織の規模感」です。「お金を払ってでも解決を望む当事者が一定数見込める課題」を選定することが「収益性の高い社会問題解決型ビジネス」を生み出す上ではとても大事になります。

Step4:「違和感のある事業発想」
〜ビジネスのノウハウを最大限掛け合わせていこう!

 さて、いよいよアイデア発想フェーズです。ここで私自身がもっとも大切にしたい考え方は「違和感との掛け算」です。これまで多くのプレイヤーが取り組んできたもののなかなか解決されない社会問題。行政や研究者の方々とお話をすると、企業が持つ独自の視点や意外なアプローチへの強い期待が感じられます。
 自社独自の「経営アセット」やテクノロジーやDXなど最近の「ビジネスキーワード」、あるいは「外部有識者との対話を通じて得た新たなヒント」など、違和感同士の掛け算を進めることでこれまでにはなかったアイデアを構想していくことが、企業による社会問題解決型ビジネスには求められているわけです。

社会問題解決先進国
日本を牽引していくのは
みなさん!

 いかがでしたでしょうか? ここまで書かせていただいた4つのプロセスは、言語化されれば当然のことに思えます。ですが、多くの企業からお話を伺うと、なかなかこのプロセスがうまくいっていないと聞く機会が多いのです。「社会問題解決」をビジネス化しようという話にも関わらず、収益性を意識した従来の事業企画プロセスとは異なるアプローチをとっている方が多いように感じます。
 一方、成功をされている方々にお話を聞けば聞くほど、従来の事業企画アプローチに拍車をかけて工夫を凝らしている企業が多いと感じるわけです。そして社外の仲間集めをうまくされている方が多くいらっしゃるのも事実です。
 日本が「課題先進国」から「課題解決先進国」になれるか否かは、日本企業の第一線で活躍するみなさんにかかっていると強く感じています。ぜひこのチャレンジの歩みをみなさんとご一緒させていただけたら嬉しいです。

追伸)
JMAでは電通独自のワークショッププログラムを活用した「社会問題解決型BXセミナー」を毎年開催しています。多くの仲間が増えるということで好評を得ております。ぜひご参加ください!!

戒田 信賢
株式会社電通strategist