特集


ファン愛に常に寄り添う明治と
「すとぷり」のコラボ

INTERVIEW

by 船山 慶 氏  杉山 詩織
株式会社明治
マーケティング本部 カカオマーケティング部

 YouTubeやTikTok、ツイキャス(TwitCasting)などを中心に活動するエンタメアイドルユニット「すとろべりーぷりんす」こと「すとぷり」。10代の女性を中心に大人気で、2022年には全国5か所を回るドームツアーを開催、32万人を動員し大成功を納めている。
 明治は、“いちごの王子様”「すとぷり」とコラボした“Here We Go!! はっぴーすとろべりーめもりー!”プロジェクトの一環として、2023年3月より期間限定でスペシャルパッケージの「いちごお菓子」(計6アイテム)を発売した。
 今回、企業の立場からの応援消費への取組みを紹介するため、ご担当された船山さんと杉山さんにお話を伺った。

「すとぷり」とのコラボの始まり

───現在、誰かを応援するための消費が増えています。今回は企業の立場から応援消費についてご意見をお聞きしたく思いますのでよろしくお願いします。まず、明治様が実施している「すとぷり」とのコラボについて具体的に教えてください。

杉山 「すとぷり」とは、2021年8月からコラボレーションを行っています。それは、コロナ禍で直接「会う」ということができない時期でした。特に「すとぷり」は、ファンに「会うこと」をとても大切にしているグループです。そこで、コロナ禍で会えない状況であっても、「すとぷり」を身近に感じてもらうためにはどうしたらいいのか、と考えました。
 会えないけれど会っているかのように楽しんでもらうために、弊社の商品を通じて、SNSやバーチャル空間で会えるコンテンツを提供するかたちで「すとぷり」とコラボレーションを始めました。 「すとぷり」は、Twitter、TikTokといったSNSを中心にファンとの絶妙な距離感を持って、コミュニケーションすることが非常に得意なグループでもあります。その力を十分借りたコラボレーションにしていきました。「すとぷり」を応援するZ世代中心に新しいコミュニケーションの形が広がっており、それにもマッチした企画となりました。

Z世代のコミュニケーションの特徴

───ファンとのコミュニケーションを大切にしている「すとぷり」と御社の気持ちがマッチした企画なのですね。今、杉山さんからZ世代のコミュニケーションの話がでましたが、世代のコミュニケーションの特徴をどのように実感されていますか。

杉山 私自身、Z世代にぎりぎり含まれていますが、デジタルネイティブ世代ということもあって、SNSの反応が非常に速いといえます。特に「すとぷり」に関していえば、発信される情報への反応速度は目を見張るものがあり、ファン同士の交流も活発で、嬉しいことや悲しいことがあったときに、爆発的に拡散されていきます。
 従来の全ターゲットに対してテレビCMを通じたコミュニケーションをしていた頃よりも、狙った世代に深い情報量と速い速度で広がっていくという印象があります。これがZ世代のSNSコミュニケーションの特徴ともいえます。

───私が一緒に仕事をしている人たちにZ世代がいますが、テレビは観ないでデジタルで情報を得るといった行動が多いように思います。ご自身もそうですか。

杉山 そうです。自分の興味があるジャンルを選んで情報を取っていく世代だと思います。自分で興味のある情報を取っていくと、自然にタイムライン上などでカスタマイズされるようなアプリがたくさんある時代でもあります。テレビをつけたままで過ごすというより、自分がデジタルを中心に主体的に動く傾向が強いです。

───明治様では他にもコラボレーション商品があると思いますが、年代別のターゲットによって進め方は変えていますか。

杉山 「すとぷり」では、Z世代の皆さまに向けて有効なTwitterやTikTokで進めています。世代によって効果的な手段、場所は変わってくるので、ターゲットに分けてマーケティングを行っています。

ファンに喜んでもらうための観察

───「すとぷり」とのコラボレーションを行う上で重視していることをお知らせください。

杉山 とにかくファンの方が喜んでくれることを一番に考えて、明治としてやりたい「施策」を「すとぷり」としてどう考えるのか、彼らが所属する株式会社STPRのみなさまと綿密な打ち合わせを行いました。
 繰り返しになりますが、「すとぷり」はリスナーと呼ばれるファンと出会えた喜びを大切にしているグループで、そのファンの方々も、そのホスピタリティについていく素敵な人達ばかりです。何をすれば大事なファンの方々が喜んでくれるかを、「すとぷり」と同じ目線で企画立案できたらという点はいつも大切にしていました。

───喜んでもらうために、ファンの人たちの観察やインタビューを実施したりしましたか。

杉山 インタビューというより、SNSでの反応を細かくチェックしました。こちらからの情報発信に対して、素直で素早くレスポンスをしてくださるファンの方々なので、間違ったことをしていないか、具体的にどのような反応があるかなど、反応は逐一チェックしました。
 ファンの方々にどのようなことを仕掛けたら喜んでくれるか、どのようなことを仕掛けたら喜んでくれたかをSTPRのみなさまとも常に、お互いにフィードバッグし合っていました。

───SNSは商品企画の際にも広く活用されるのでしょうか。

杉山 SNSの反応のみで新商品を出そうという開発プロセスは取っていません。ファンの方々がどのような企画を行ったら喜んでくれるかをスタートに、新商品のパッケージをコラボレーションしたり、SNSの仕掛けを行ったりします。
 今回はARを使った施策を実施していました。新商品をかざすとスマホの画面上で本人たちが浮かび上がって、「会いに来てくれてありがとう」と話します。コロナ禍で会えなくてもどかしい思いをしているファンの方々、ファンに会いたいと思っている「すとぷり」側の気持ちも合わせて考え、プロモーション全体を検討しました。

「すとぷり」ファンの愛に敬意

───ファンがいかに喜ぶかを考えて、今回のコラボレーションを進めていることが改めてわかりました。その気持ちは届いたでしょうか。また、想定外の反応や発見についてはいかがでしょうか。

杉山 「すとぷり」のファンは非常に愛が深いことを改めて感じました。SNSの発信やファン同士のコミュニティなどからは「あふれ出る好きという気持ち」を感じています。
 今年のバレンタインには、久しぶりにリアルイベントを株式会社STPRの本社のある渋谷ヒカリエで実施しました。ヒカリエの1階に、「はっぴーすとろべりードア」と称して、「すとぷり」の等身大のパネルを設置。コラボ商品と一緒にかざすとARが出てくるというイベントです。当日はファンの方々が、朝早い時間から列をなして並んでくださいました。その際には、ファンの方々同士のリアルな交流だけでなく、イベントに関するSNSでのたくさんの発信がありました。
 この企画を通して、特に感じたのがファンの方々の「愛の深さ」です。イベント当日、「寒い中、私たちのためにこのような素敵な企画を用意してくれてありがとうございます」という愛のこもったメッセージとともに、私たちスタッフに対してお菓子とお手紙の差し入れをくれたファンの方がいらっしゃいました。久しぶりのリアルイベントで、私たちもはじめは運営面など不安もありましたが、混乱やパニックは一切ないどころか、このように温かい気持ちで皆さま参加してくださり、感謝の気持ちでいっぱいになる出来事となりました。「すとぷり」という出会いを大切にしているグループと、そのファンの方々だからこそ、このイベントが成立したのだと改めて感じました。

船山 私も、「すとぷり」とコラボレーションできたことで、ファンの方々の素晴らしさに気付かされました。マナーの良さが素晴らしく、お互い譲り合うという、そういうコミュニティであると感じました。それぞれに熱い思いはあるけれど、秩序を守りながら応援する、こうしたファンのコミュニティが世の中には数多くあるようにも感じます。

Z世代は自分の好きを隠さない

───ファンの愛はすごいですね。応援消費はZ世代の特徴と言えますか。それとも、世の中全体の流れとして捉えていらっしゃいますか。

杉山 以前から応援消費の流れはあると感じています。もともとは「アイドル」といった対象に対してファンが付いていくという構造の中に存在していました。現在は、自分が楽しかったこと、嬉しかった気持ちを多くの人に一瞬で届けられるという点が、Z世代と応援消費の親和性の高さを示すものであり、この流れは定着・拡大していくと思っています。今後、義務感や押し付けられた価値観からはますます脱却が進むのではないでしょうか。だからこそ、自分が本当に好きなものに対して、限られた資金を使うという部分は伸びていくと思います。また、私自身、好きなコンテンツが様々あるZ世代の一人であり、その活動はとても楽しく生きがいです。

───杉山さんご自身は、どのようなときに生きがいや嬉しさ、楽しさを感じますか。

杉山 推しの新たな情報を得た時や実際に会えるときが、楽しいポイントです。そのときに、その気持ちをTwitterやInstagramを通して、即座にいろいろな人とやり取りできるところにも楽しさを感じます。SNS上では、同じものに同じぐらいの熱量で興味を持っている人たち、コミュニティが数多く存在していて、それをすぐ見つけられるというメリットがあります。Twitterで本名も知らないような人と一緒にライブに行くといったこともよくあります。
 今回コラボさせていただいた「すとぷり」を見ても、やはり、同様に「好き」ということに対して、他者に発信するハードルはどんどん低くなってきているように感じます。自分の「好き」という気持ちを臆せず発信することに、抵抗感はまったくないという印象を受けます。
 Z世代は「好き」を言える世代なのです。SNS上で表現しやすいということもありますが、リアルでもその傾向が強いのではないかと思っています。環境的にも、個人の価値観を臆せず発信できる寛容な社会になってきていると考えています。

───今後、企業として、応援する人たちの気持ちをどのように支援していきたいと考えていますか。

杉山 推し活や応援消費は、自分の好きなことだったり、興味あることだったり、基本は非常に幸せな消費だと思います。「すとぷり」で言えば、彼らとともにファンの気持ちを尊重して、思い切り楽しんでもらえるような企画や施策にしたいと考えています。
 今は、コンテンツも非常に充実している時代で、次々と新しいものが発信されます。また、発信されるツールもいろいろあります。だからこそ移り変わりも激しい。とても好きなものがいくつもあったり、ころころと変わったりします。そうしたところを敏感にキャッチして、常に面白いものとか、好きになってもらえるものに寄り添って発信していくのが大事ではないかと個人的には思います。

船山 「すとぷり」に関しては、もともと当部署の部長の娘さんが大ファンで、そこからコラボしてみては、という話になりました。当時は私が担当でしたが、「すとぷり」のことを知らなかったので、半信半疑なところからスタートしました。当社のコラボスタンスとしては、一ファンという立ち位置です。ファンの方たちと同じ目線でいながら、コラボレーションしているメーカーとして我々にできることは何か?を突き詰めていったという経緯です。
 いわゆる「オタク」が市民権を得たのがいつ頃でしょうか。10年前か15年前ぐらいだったように記憶しています。昔の「オタク」は、ニッチの象徴で、やや陰キャラのようなイメージがあったと思います。しかし、世の中の変化とともに、「オタク」のイメージは現在は大きく変わりました。堂々とファン活動をすることが認められて、むしろ推しがいないほうが恥ずかしいぐらいまで転換されました。
 「すとぷり」だけではなくて、様々なコンテンツに広いつながりがある点が、昭和の時代との大きな違いだと考えています。コンテンツのファンの方たちの熱量の高さは、マーケティングに変革をもたらしていると思っています。

───企業として応援消費をとらえていく前提にあるのは、ファンの気持ち、想いを大切に丁寧に分析し、実現することが重要だとわかりました。ありがとうございました。

(Interviewer 中塚 千恵 本誌編集委員)

船山   慶
杉山 詩織
株式会社明治
マーケティング本部 カカオマーケティング部